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10『有為天変』
「なあ熟女って何歳から?」
「知らんわ」
「こないだ熟女パブってのに連れてかれて、女の子が27歳、俺と同じだったんよ。じゃあ俺も熟男なんかなって」
「アホか」
「またアホって言った」
嬉しそうに笑う顔に、冷めた目を向ける。
「70なら40も若い嫁。高校生なら25はおばはん。相対的なもんだろ」
「ああ、なるほど~! すっげえ説得力。まさに相対性理論!」
「違う。アインシュタインに謝れ」
クスクス笑い。肩がずっしり重くなる。
「そのツッコミ最高。……あ~あ」
凭れて来た男は、いわゆる天才らしい。なのにアホだ。
出会ったのは一年と四年。後輩と面倒な先輩。
絆され付き合い始めたのが三年と院生。院に残った理由が『逢えないと死んじゃう』とかアホ過ぎた。
そしてこの春。
「……就職しちゃうなんて。しかも地元とか」
俺は四年。コイツは准教授。
「そんな遠くない」
「俺、毎日実家まで行く」
「やめろ、アホ」
「また言った。それ言うの、おまえだけだよ」
でも今度からは
「俺が、来るよ」
「……へ?」
期待の時期助教授が、眼を丸めてる。
「毎日じゃないぞ」
「うそ。おまえが、来るの?」
こっちだってそれなりに、おまえの事好きなんだって。
いい加減気づけ。
「アホ」
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