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第4話・三上

「三上。また女子が呼んでる。視聴覚室前だって」 「あー。りょーかい」 「あ……」 「どした?」 「何でもねー」 「そ? ちょっと行ってくる」 「おー。待ってる」  あーあ、またか。今日は堀川とゲーセン行く予定だったのに。教室に堀川を残して、呼び出し先へと重い足を運んだ。  俺が誰とも付き合ってないって話が広まって、女子どもが騒ぎ出したんだ。  こうなると面倒だから、適当に女子と付き合っておくんだけど、先週、堀川にクリスマスのお家デート――じゃなかった、慰め会だった――に誘われたから、そっちに全神経を集中させておきたくて、片っ端から断っていた。  あーマジで嫌だ。  告白してきた名前も知らない女子が、堀川好みの黒髪ロングの巨乳女子なのも嫌だ。  小さい身体で、頬を染めて、可愛い声で「好きです、付き合ってください」なんて言ってくるのも嫌だ。  ごめんって断ると泣かれるのも嫌だ。  泣き止むまで帰れないのも嫌だ。  好きな人いるんですかとか、付き合ってる彼女ができたんですかとか、泣きながら訊かれるのも嫌だ。  どっちの質問にも、いないよって答えるしかない自分自身も、嫌だ。  大声で叫びたい。  俺は堀川が好きなんだ、って。  俺にフラれて小さな肩を震わせて泣くアンタより、俺の方が泣きたいくらいだ。  俺には告白する権利がない。想いを伝えられるだけ、アンタはマシだろ。  日が暮れた教室に戻れば、堀川は机に突っ伏して寝ていた。  お待たせ、とデコピンすれば、大きな身体を揺らして跳ね起きた。 「あ、ゴリラが起きた」 「おー。ってか暗っ! もうそんな時間か」 「帰ろーぜ。悪ぃ、遅くなって。ゲーセンはまた今度だな」 「ああ……」 「どした?」 「あ、いや。その、日比野さんと付き合うのかなーなんて」 「なに、気になる? 俺と付き合ってほしくないんだろ」 「えっ!?」 「わっかりやす……顔に出まくってんじゃん」 「え、えっ!? ウソだろ!?」 「バレバレ」 「ま、マジ、で……?」 「あの子、お前のタイプど真ん中だもんな。もしや、狙ってた? 安心しろよ、断ったから」 「そ、そんなんじゃねーし!」 「なに赤くなってんだよ。おっぱいデカかったなー、あの子」 「そ、そーなんだよ! 揺れる巨乳、いいよな!」 「ハイハイ。まあ俺は尻派だけどな。帰るぞアホゴリラ」 「ウホウホッ。あ、ちょ、置いてくなよ!」  クソ。  畜生。  ……明日から豆乳飲む量増やそう。

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