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第12話・三上

 いま俺は、堀川と一緒のベッドに寝ている。  まさか、一緒に寝てくれるとは思わなかった。食い下がって良かった。  堀川は身体がデカイから、絶対拒否られると思ったのに。  男二人で一つのベッドとかねーだろって、笑い飛ばされるかと思ったのに。  ごく普通のシングルサイズのベッドは、育ち盛りの男子二人には狭すぎる。  でも、だからこそ、密着できるんじゃないかって、ちょっと期待した。  実際、今は俺のケツと堀川のケツが触れ合っている。  まさか、好きな男と一緒のベッドで寝られるなんて、クリスマスを片想いの相手と過ごせるなんて。  それに、高校生活がこんなに楽しいなんて、小中学校の頃の俺には考えられなかった。  堀川に出会えて、本当に良かった。  仲良くなれて、本当に良かった。  好きになって、良かった。  さっき堀川に一番のダチだって言われたのには、ほんのちょっとだけ凹んだけど。  でも、最初から無理なのは知ってるから。  悲しいけど。切ないけど。  でも、それ以上に今は幸せを感じていた。  静かな部屋には堀川の小さな呼吸音だけで、俺の大きな鼓動が堀川に聞こえてんじゃねーかって心配になる。  そっと寝返りを打って、堀川の方を向いた。  大きな背中に太い首。刈り上げられた襟足。男を感じるパーツに目が釘付けになる。  こんなに接近して見ることは少ないから、記憶に刻んでおかないと。  寝るときはいつも真っ暗にする派だけど、豆電球つけといてもらって良かった。少し暗いけど、じっくり観察できる。  あー触りてー。  抱き着きたい。  全身で堀川を感じたい。  ちょっと待てよ?  今、俺は堀川のベッドに寝てる。  堀川の使ってるシーツと毛布に挟まってる。そして、隣には本物の堀川。  つまり、実質堀川に抱かれてるだろ、これ。  ヤベェ。俺の発想、天才。  あー、興奮してきた。  いや、ずっと興奮しっぱなしだけど。  さっきからチンポ、ギンギンに勃起しまくってるけど。  オナりてー。  いやさすがにダメだろ。バレたらどうする。  いやいや、少し触るくらいなら……。  しょうもない葛藤をしながら股間に手を伸ばしかけたが。  ごろっと堀川が寝返りを打って、慌てて目を閉じた。  堀川の寝息が顔に当たり、こちらを向いているのが分かる。  俺の膝が、堀川の逞しい太ももに当たって、じわじわ熱くなっていった。  あぶねー、観察してるのバレるとこだった。  つうか、堀川、寝つきいいな。  ……なんだよ、俺なんかドキドキして全然寝れねーってのに。  どんな顔して寝てんだろ。やっぱカッコいいかな。それともマヌケな感じかな。半目になって涎とか垂らしてたりして。でも、それも可愛いな。  寝顔を見てみたくて、そっと目を開けた。  そこには、ぱっちりと目を開けた堀川の顔があった。 「おっわ……!」 「び、ビビった!」 「え、なに、起きてたん?」 「いや、パッと目開けたら、お前も目開けて……」 「そ、そう」 「あ、ああ。お、起こしたか?」 「いや、俺も、なんかパッて目が覚めて……」  へへへ、と二人でぎこちなく笑い合う。  いやいや、完全に俺のこと見てたよな!?  え、どういうこと?  俺がシコろうとしたのに気付いたのか!?  つうか、一緒のベッドに入ってて、チンポをこんなにおっ勃ててたら、言い逃れできなくねーか?  そこに気付いて青くなり、目を伏せて、バレないようそっと脚を曲げて腰を引いた。  ゴリ。  ゴリラのゴリじゃない。膝になんか硬いものが当たった感触の、ゴリ、だ。  な、んで……? 「堀、川……?」 「こ、これは、ちがっ……」  この焦りよう。慌てて股間を押さえる行動。  今の、堀川の勃起チンポ?  え、なんで? マジでなんで? 「き、昨日も今日も、抜いてなかったから、布団入ったら勃っただけだから!」 「あー、そ、そう! 分かる分かる。あるあるだよな」 「だ、だよなあ!」 「お、俺も今、勃ってんもん」 「え……」 「あーえっと、いや、今彼女いねーし、三日間くらい抜いてなくってさ」 「そっか、そうだよな! ははは」 「ははは!」 「……」 「……」  しばらく二人して無言で視線を彷徨わせたあと、堀川は恐る恐るといった風に口を開いた。 「えっと……抜く?」 「えっ!?」 「えって。そのままじゃ、辛くね?」 「まあ……。つか、マジで……いいの?」 「当たり前じゃん」 「え……じゃあ、お願いします」 「え?」 「え?」 「あ、……俺が、三上の……?」 「ちがっ……! ウソウソ、冗談だって!」 「あー……いーけど、別に。男同士だし」 「え。……マジ? じゃ、じゃあ俺もお前の抜いてやるよ」 「ま、マジ……?」 「おー。マジマジ」 「えっと……どうする?」 「あー……とりあえず起きて、服脱ぐ?」 「そ、そうだな! 脱ごう、脱ごう!」 「え、上も脱ぐん?」 「あ……汚れるかもしれねーし? ははっ」 「そーだな、お前のジャージ汚したら悪いもんな」 「そんな上等なジャージじゃねーけど」 「知ってっから」 「バレてたか」 「つか、布団から出るとやっぱ寒いな」 「エアコンつけるか。リモコンどこだ……」  ピピッと鳴ったあと、部屋の電気がついた。  煌々とした蛍光灯のあかりが、全裸の俺たちを照らす。  おいおいおいおい!  丸見え! 「おい! エアコンの代わりに電気つけてどーすんだよ!」 「悪い、間違えた。ちょっと待って。エアコンのリモコンどこだ?」 「え、さっき使ってただろ?」 「ここに置いてたんだけど、マジでどこだ?」 「落ちてんじゃね?」 「えー、あ、あった」  探すフリをしながら、俺は堀川の全裸をくまなく観察した。冷静を装っているが、生唾飲み込みまくりだ。  すげーエロい!  ヤバい!  俺のチンポ爆発しそう!  堀川のチンポは想像以上にデカかった。女子に使ってないハズなのに、色は黒くて、ズル剥けで、亀頭はテカテカしてて、反ってる角度がエゲツない。黒々とした陰毛も最高。  童貞なのにアレって、宝の持ち腐れじゃねーか。  あー、あのチンポにズポズポされたい!!  エアコンから暖かい風が吹き始め、ただでさえ沸騰した頭を更に熱して茹だらせる。「電気消すか」とリモコンを持った堀川を遮った。 「あーいいって」 「え」 「なんかオカズ見ながらしよーぜ」 「オカズ……」 「お気に入りの動画とかあんだろ?」 「ああ、まあ、あるけど」 「はよはよ」 「……お前はどんなの見てんの?」 「あー? 制服とか、水着のヤツとか」 「へえ」 「お前はアレだろ? 黒髪清楚な巨乳」 「ちげぇって」 「あー、あれか。好みのタイプじゃ抜けない派か」 「あ、え? あーそうそう! 俺、そっち派」 「AVと現実は違うしな」 「さすがヤリチンは言うことが違ぇな」 「はは。だろ?」  堀川はノーパソをベッドの上に置き、検索サイトで動画を探し始めた。  なんだ、いつも抜いてる動画じゃねーのかよ。  堀川のお気に入りのだったら、見ながら興奮して俺を押し倒して――なんてあるわけねーか。  まあいい。  俺の勘違い発言から始まった人生最大のラッキーチャンスなんだ。  一生に一度、最初で最後の堀川のチンポ、充分に堪能してやる……!

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