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第16話・三上

  「まずは?」 「脚を開かせて、ローション垂らして濡らして、ゆっくり周りを撫でて……穴を柔らかくすんの」 「こう?」 「あ……ん、そう、で、指を一本、ゆっくり挿れて」 「……こう、だよな」 「はぁっ……抜いたり、挿れたり、ぁっ……中で指曲げたり、んっ」 「なんか、コリって……」 「あ、あ、そこ、ダメ……!」 「ここ?」 「あ、待っ……、あぁっ!」 「……っ!」  腰が跳ねて、堀川の指をきゅっと締めた。俺のチンポからはこぷりと精液が溢れ出て、腹に垂れた。  ちょっとイってしまった。  堀川の指、めっちゃ気持ちいい。的確に前立腺を突いてくるとか、ポテンシャルの高さにびっくりする。  乳首も気持ちよかったしなぁ……。  乳首舐めながらガツガツ掘ってくんねーかな……。  少しとろんとしてしまった頭を振って、理性を取り戻す。  これは、あくまでも堀川が女子とヤる時のための練習だ。俺が射精したら、堀川が我に返って萎えてしまうかもしれない。  手を股間に伸ばして、チンポの根元をきゅっと握ってイかないように手に力を入れた。 「はは。悪い、イかないようにするから。続けよーぜ練習」 「お……う」  堀川の返事の歯切れは悪いが、ヤツのチンポは全然萎えていない。それどころか、腹に当たるほどギンギンに勃起していた。  さすが童貞。俺のケツ穴だけでも興奮してくれるとか。 「じゃ、続きな?」 「ああ。次は?」 「指、二本に増やして、んっ、そう……ぁン」 「っ……次は……」 「ナカをっ、優しく撫でたり……ぁっ、指、広げたり、三本に増やし、たりっ……う、んんっ」 「……で?」 「柔らかくなったら、相手が挿れてって……あン、言ってくるから、そしたら、あっ、ローション、足して」 「ああ」  しばし無言で解された。ぐちゅぐちゅとイヤラシイ音を立てながら、堀川の指は器用に俺の中を拓いていく。  意思を持って動く指は自慰とは違って、次にどうするのかが分からない。だから、予想外の動きに翻弄され、俺の息は早々に上がっていた。  早く、欲しい。  堀川のを。 「…………挿れて」  俺の言葉に返事はなかった。代わりに大きな鼻息が一つ。  堀川の熱くてテラテラした亀頭が尻の穴にあてがわれたのを感じ取って、わずかに身体が強張る。  初めてのセックス。本当に堀川の童貞、貰えるんだって感動に、全身が震えた。  ローションのパッケージを破って、中身を自分のチンポと俺のケツに振りかけた堀川は、ゆっくりと時間をかけて俺の中に入ってきた。  熱い、尻が裂けそう。  でも、満たされる。  気持ちいい。  最高。 「キツ……」 「はぁっ、あぁっ」 「平気か?」 「んっ……へーき」 「次は?」 「ふふっ」 「? どうした?」 「へへ、脱童貞。やったな」 「ああ、そうだな。ありがとな、三上。で次はどうする?」 「あー……あとは、好きに動いて」 「いいのかよ」  もう限界だった。  何か喋ったら、好きだとか、とんでもないこと言い出しそうだった。 「うん、堀川の好きなように、して」  一回きりの記念だから。  クリスマスのプレゼントだから。  聖なる夜を性なる夜にしてやろうっていう、サンタの粋な計らいなんだ、これは。  だから、めちゃくちゃにされてもいい。痛くてもいい。俺に傷がついてしまっても構わない。 「じゃ、動くからな」  堀川は挿入したまま俺に覆いかぶさった。ぐっと奥まで堀川が入ってくる。やっぱりいつも使ってる大人の玩具よりデカイから、腹の中が重苦しい。  ハッハッと犬のように浅い呼吸を繰り返して、次の衝撃に備えた。  けれど、そのままガツガツと腰を振ってくるのかと思いきや、堀川の腰は動く気配がない。  俺のレクチャーをなぞるように、首筋にキスを落とし、鎖骨に舌を這わせ、胸を揉み乳首を口に含んで転がした。  そうしている内に、俺の直腸は堀川の形に馴染んでいく。張ったカリがじんわりと前立腺のしこりを圧し、徐々に痛みから快感へと変化していった。俺の吐息に色が混じり始める。 「はぁっ……」 「良くなってきた?」 「うん……」 「そっか。なら良かった」  堀川はニカッと大きく口を開けて笑った。  あー好き!  ただの練習なのに、俺のことオナホだって思ってくれていいのに、堀川は優しく気遣ってくれる。  やっぱり好き。そんな堀川とエッチできて、嬉しいって、腹の中がきゅんっとなった。 「うお、締めんなよ……」  ふふっと笑って、再び乳首を舐め始めた堀川は、遠慮がちに腰を動かし始めた。初めは浅いところで軽く、そして徐々にその動き幅は大きくなり、穴の縁のとこも、前立腺も、奥の方も、堀川に擦られているところ全部が気持ちよくなっていく。 「あ……んっ、あ、あ」  自分の声じゃないみたいな、鼻にかかった甘えた喘ぎが勝手に出てくる。俺の声で堀川が萎えないか心配だったけど、我慢することはできなかった。 「あっ、あぁっ……ンっ、あン、アッ」 「あー、気持ちいい……ヤバイ」  いつの間にかAVの再生は終わっていた。  堀川の小さな呟きも、吐息も、繋がっている箇所からの粘着質な水音も、我慢できずに俺の右手が勝手にチンポを扱いている音も。  全部聞こえていた。 「ほり、かわ……」 「黎人」 「あ、あ、……っ」 「黎人……」 「あ、ああっ……!」 「れい、と」 「こーじ……」  最奥まで熱いのが入ってくる。  全身に毒が回る。甘い甘い毒だ。  その毒に飲み込まれてはいけない、そう思うけれど、快感に痺れた身体はどうしようもなかった。  イく。イったら終わる。  夢の時間が終わってしまう。  叶わない恋。諦めなきゃいけない恋。  抱いてくれただけで、俺は幸せだから。  心の中で叫ばせてくれ。  好きだ、堀川。  必死に歯を食いしばって言葉を飲み込み、その代わりに熱い白濁を放出した。  連動して、俺の尻は堀川のチンポを容赦なく締め上げる。 「っ、やべ……スゲェ……」  堀川は苦しげな呻きとともに、俺の尻に腰を打ち付けた。腰を両手でがしりと掴まれ、全身を揺さぶられる。脳みそまで撹拌されてるみたいに、ぐちゃぐちゃでドロドロに気持ちがいい。 「あっ、あっあっ……!」 「あっ、イく、イくぞ……っ!」  太い指に力が入り、ぐっと腰の骨を押された。それと同時に堀川のモノは俺のナカで震えて果てた。  激しかった動きは緩慢になり、そして止まった。  俺のナカから抜けていくチンポ。喪失感が切なくて、一つ大きく息を吐いた。 「はぁ、はぁっ、大丈夫か?」 「ん、ヘーキ……」  堀川は自分のチンポをティッシュで拭いたあと、俺が腹に出した精液も綺麗にしてくれた。 「あーめっちゃ気持ちよかった。俺、合格点?」 「ああ。どこに出しても恥ずかしくないよ」 「そっか」  満足そうに笑う堀川に、胸が痛んだ。  ああ、もう夢の時間は終わりなんだ。  繋がっている最中、最高に幸せだった。心まで繋がってる気がした。でも、イって終了。またフツーの悪友に戻るんだ。  はあ、と息を吐いて、ティッシュで手と尻を拭いていたら、真面目な顔をした堀川が切り出した。 「あのさ、三上」 「なに」 「今は正常位だったろ? バックの練習もしていい?」 「は……」 「あ、いや、身体キツかったらいいんだ、また今度で」 「また、こんど……?」 「ああ。またしない?」 「え……」 「三上も気持ち良さそうだったし、三上に彼女できるまででいいから、練習に付き合ってくれねーか?」 「あー、……いいけど?」 「そっか! サンキュー!」 「おー。礼は唐揚げでいーよ」 「唐揚げくらい、何個でも作ってやるよ! じゃあ早速、二回戦目いこーぜ」 「あ? ああ。うん、よろしく」  サンキューはこっちのセリフだ。  どういうことだ、と不思議に思いつつも、まさかの夢タイム延長に心の中で神様に感謝した。  結局、もう出ねーと堀川がギブアップするまで、俺は堀川に中出しされ続けた。明け方まで。童貞のパワー、すげぇ。  俺たちの身体は最高に相性が良かったのか、堀川のテクが凄かったのか、俺は最後の方はイきっぱなしで、クタクタだったけれど、最高のクリスマスになった。

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