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 今は珍しい詰襟の学ランに、赤いダウンジャケットを身に着けたその姿は。  白い肌に、少し癖のある黒い髪。  やや小柄で、細腰のやせ型。  薄めの、しかし地味ではない日本的な顔立ち。 (好みだ……!)  いやいや、九死に一生を得た身でありながら、そしてその恩人である少年を相手に、色目を使っては罰が当たるだろう。  凌介は、黙ってコーヒーを口にした。  すると、少年の方から話しかけてきた。 「僕、榊原 晶(さかきばら あきら)っていいます」 「私は、相川 凌介だ」 「相川さん、写真撮られるんですね」 「ああ、そうだよ。機材が壊れてなければいいけど」  部屋の隅にまとめて置かれた、カメラや機材。  凌介は立ち上がると、その中からカメラを手にして戻ってきた。 「どうしても、冬の高原を撮りたくってね」  液晶画面に、午前中撮った写真を映して見せると、晶は眼を輝かせて喜んだ。 「すごい……! 相川さんは、プロの写真家ですか?」 「アマチュアだけどね。カメラは大好きなんだ」  気が付くと、晶はぴったりと凌介に身を寄せて液晶をのぞき込んでいる。  その時、ふと二人の手と手が重なった。

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