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5月
「彼女できた」
唐突にそう言われて、青は返す言葉がなかった。
というか、なんて答えればいいのか分からなかった。
「またか…で、次は誰だよ?」
なんてことないように進藤が聞く。
そう、なんてことないのだ。瀬戸にとって彼女ができることはいつもの事。というか彼女いない方が珍しい。
前の彼女と別れてから3ヶ月以上経っていたから、このまま彼女作らないんだとばかり思っていた。油断した。
別に油断しなかったら何かあった訳でもないけれど。
どうせすぐ別れる。今までだって1ヶ月続いたのは2人くらいだった。
そう独りごちながら、青はいちごミルクをちびちび飲む。
「B組の恋華。知ってる?あの金髪の」
「あぁ、あのギャルね。恋華っていう名前だったんだ…なんかこう、恋に生きるって感じの名前だな。重そう」
「それはウケる」
「ウケんな、馬鹿」
2人の会話を聞いていた三上が、ぽつりともらす。
「俺も彼女欲しいなぁ…」
「…それな」
ストローを噛みながら適当に相槌を打つ。
本当は欲しくなんかないのに。
「どした?2人とも」
2人して机に突っ伏してると、進藤から心配の声がかかる。
「万年彼女持ちのお前らにはわかんねーよ……」
三上が死にそうな声で呟いた。
「じゃあ林間学校でつくれば?絶好のチャンスじゃん」
林間学校。そう。明後日から林間学校が始まる。
クラスの親睦を深めるため、毎年あるこの行事。
と言っても中身は、グループ別でカレー作って山登るだけである。
「つっても俺らのグループ男だけじゃん、この4人じゃん。どうやって女子と仲良くなるんだよ」
「気合いだな、気合い」
「くっそ他人事だと思いやがって…!!」
進藤と三上の馬鹿騒ぎが始まり、青は三上から顔を背けた。
くぁ、と欠伸をする。寝よ。
そのまま寝る体勢に入ろうとした時、頭上から甘い声が降ってきた。
「青は女子と一緒のグループが良かった?」
「……別に」
瀬戸の手は青の口からストローを外し、代わりにいちごの飴を放り込んだ。
「三上には悪いことしたね、俺が4人のグループがいいって決めちゃったから」
「…4人の方が楽しいから、いいんじゃないの」
瀬戸は少し驚いた表情を見せ、それから笑った。
「…そうだね、俺も青と一緒でよかったよ」
「…ん」
───────なんかこの飴、甘すぎない?
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