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5月 林間学校2
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「…ぉ、…あお、青」
「…ん、」
誰かに揺さぶられて、目を覚ました。
目線の先には、焦げ茶の天然パーマ。
何で、と口を動かす前にクチッとくしゃみが出た。
「あーもー…こんなとこで寝るから…」
瀬戸は脱いだジャージの上着を青に被せた。
ふわっと香る瀬戸の匂い。くそ良い香り。
「…ありがと」
鼻をすすりながらお礼を言う青に、瀬戸はため息を漏らした。
「カレー作りの時間とっくにすぎたよ?みんな今お風呂入ってる。青がいないから、俺らのグループは青の事探してたんだよ」
…まただ。また迷惑をかけてしまった。
今のところ迷惑かけてしかない。
「…大丈夫?」
自分の発言が青の何かを抉った事を悟った瀬戸は、優しく語り掛ける。
「うん」
そう返す青の表情は暗い。
「…そういえば、なんか三上も様子変だったけど。なんかあったの?」
「…」
瀬戸は敏いから、絶対わかってるくせに。
「…航を怒らせた」
瀬戸は驚くことなく、静かに続きを促した。
「航はいつも俺を気にかけてくれていたのに、俺は航に迷惑かけてばっかで」
「うん」
「怒らせて、でもどうしたらいいか分からなくて」
「ここにきた?」
「うん」
「…それなら青がやることはひとつ」
その言葉に青が顔を上げる。
瀬戸は続けた。
「ごめんなさい、て言えばいいんだよ」
単純明快な言葉に目を丸くする。
「…それだけでいいの?」
「三上はもう怒ってなかった。むしろ心配してたよ」
だから大丈夫、と青の背中を叩いた。
「…うん」
瀬戸に言われたから大丈夫。そんな気がした。
「お詫びにジュース買ってけばもうイチコロだよ」
「そうかな…そうする」
「よし、じゃあ行こっか。お腹すいたでしょ」
「うん」
ゆっくり歩く瀬戸の後ろをついていく。
途中で寄った自動販売機で、三上のジュースを買った。
温かいココア。青が知る限り三上はいつもこれを飲んでいた。
「…着いたよ」
瀬戸が食堂のドアを開けると。
「青!!!」
三上が青に思い切り抱きついた。
思わず固まる。
「ごめんね、俺がデリカシーない事言ったから…!本当はどんな青も大好きだから!!」
ごめんね、ごめんね、と三上は青を抱きしめながら連呼した。
「…三上」
見かねた瀬戸がそれを止める。
「青が言いたいことあるって」
瀬戸に促された青は、三上を見つめた。
そして一言。
「…ごめんなさい」
一筋の涙とともにココアを差し出した。
「…青ちゃん!!!!」
感極まった三上は、青を強く抱きしめ直した。
「青がそんなこと言うなんて…!しかも俺の好物まで!あの時怒って本当にごめんね、青は何も悪くないから」
だから泣かないで、と青の頬を拭う。
「いや、俺が悪いの。ごめんなさい」
「俺の方こそごめんね…!」
許された事で安心した青は、三上の背中に腕を回した。
強い抱擁を交わす2人…の傍で成り行きを見守っていた瀬戸と進藤。
「一件落着?よかったな」
「仲良く抱きしめあっちゃって…妬けるねぇ」
「…てか恋華怒ってたぞ、一緒に飯食う約束してたのに放置して青を探しに行ったから」
「ん〜まあ大丈夫でしょ」
「あいつ激情型だから気をつけろよ」
「わかってるって。心配ありがと」
「ん。…おい、2人とも。イチャついてないで飯食おうぜ」
進藤の声で現実に戻った三上と青。
「そういえば俺のせいで皆ご飯まだ…ごめんなさい」
「いいよ。見つかって何よりだしな」
ご飯の支度をしだした進藤と三上。
手伝おうとする瀬戸を、青は引き止めた。
「どうしたの?」
「…ありがとう、壮士」
頑張って精一杯の感謝の気持ちを伝える。
「ふふっ、どーいたしまして」
瀬戸は、青の頭を撫でて行った。
…なんでもスマートにこなしすぎ。
青は赤くなる頬を扇ぎながら4人の後について行った。
「「いただきまーす」」
他に誰もいない食堂で、4人でカレーを食べる。
「んま!!」
「おいしい」
「案外美味しくできるもんなんだな」
「三上でも美味しく作れるなんて、カレーの力はすごいね」
「おいこらどういう意味だよ壮士!」
4人での食事の雰囲気は、いつものお弁当とは少し違くて。
でも楽しいことに変わりはなかった。
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