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6月
ザーザーと雨が降っている。
雨はあの日を彷彿とさせるから、苦手になった。
「青?大丈夫?」
「…うん」
三上は病院で検査してもらった結果、軽い脳震盪と木枝による首の切り傷、右腕の骨折だった。
今は既に完治して、右手でノートを取っている。
季節変わって梅雨。青たち4人は放課後の教室で自習をしていた。
「雨は嫌い、じめじめしてる」
「そうだね…湿気がね」
雨のせいでやる気が出ない。
青は机に突っ伏して、窓を見た。
雨粒が窓に打ち付けられている。
一刻も早く家に帰りたいが、雨の中家に帰るのは嫌だった。
はぁ、とため息を漏らしていたら、瀬戸と進藤が自動販売機から帰ってきた。
2人はじゃんけんに負けたので、青たちの分も奢りだ。
「航がココアで…青がいちごミルクね、」
「ありがと」
「おい冷たいじゃんこのココア!温かいのって言ったよな!」
「悪い三上、手が滑った」
「壮士かよ!!!」
3人の会話に入る気力すらない。面倒くさい。帰りたい。
でも帰るのも面倒くさい…
「大丈夫?青…体調悪い?」
頭上から優しい声が降ってくる。
頭を横に降って答えた。
「そっか」
瀬戸は優しく笑って、頭を撫でてきた。
あの日、瀬戸と彼女は別れた。
青達3人も何となく事情を知っていたが、誰も詮索しなかった。
そしてそれ以来、瀬戸は青に、今まで以上に甘くなった。
それこそ、三上が怒るほどに。
青は何で瀬戸が自分に構うのか、何故三上が怒るのか分からなかったが、瀬戸の好きなようにさせた。
建前は色々あるが、結局のところ瀬戸に構われるのが嬉しかった。
「雨やまないな…」
三上が呟く。
雨足はさっきよりも強くなってきていた。
「もうすぐ学校閉まるよな、今7時だし」
「…そうだね、帰る?」
「…うん」
「じゃあ俺たち、職員室にプリント出してくるわ」
先に帰る準備しといて、と進藤と三上は教室を出ていった。
瀬戸が帰る準備を始めたのを見て、青もノロノロと動き始める。
机の上の物を片付けながら窓の向こうを見つめる。
霧のせいで、遠くは見えなかった。
視線を机に戻そうとした時。
一瞬外が光ったと思ったら、爆音が轟いた。
そして教室の蛍光灯が全て消える。
青は思わずしゃがみこんだ。
あの時の情景がまざまざと浮かんでくる。
血を流して目を開けない三上、冷たくなった体…
「…っは、はっ、」
上手く息ができない。真っ暗な闇の中、動くことも出来ない。
「…ぉ、青、」
暗闇で、誰かに抱きしめられる。
「…そうし、」
「大丈夫…大丈夫だよ…」
瀬戸は優しく囁きながら、背中をさすった。
しかし、いつまで経っても体の震えが治まらない青を見て、瀬戸の腕に力が入った。
「…やっぱ別れるだけじゃぬるかったか…」
「…ぇ?」
「…なんでもないよ、大丈夫だから…」
痛いくらいに青を抱きしめる瀬戸。
しばらくして、青の呼吸は通常に戻り、体の震えも治まってきた。
パニックが落ち着くと、この体勢が恥ずかしくなる。
「…あの、もう大丈夫…」
「いや、まだ駄目」
「、…」
瀬戸は暫く離すつもりはないようだった。
三上と進藤が帰ってくるまで、2人はそうしていた。
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