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5『チューリップと君の骨』
僕は手のひらに隠し持っていた小さな骨を、庭の片隅にそっと埋めた。
これは、君の左手の薬指。
その上から、買ってきた球根を丁寧に植えていく。
春になれば赤い花を咲かせるチューリップの球根だ。きっとこの花の中から、親指姫みたいな小さな君が生まれるに違いない。
だって君は、僕を置いていかないと、ずっとそばにいると、あれほど強く約束してくれたのだから。
君の体は煙となって天に昇っていったけれど、きっと君は新しい姿で戻ってきてくれるのだ。絶対に。
俺は親指姫なんてガラじゃないと文句を言う君を想像して、僕は少し笑った。
「愛してる。だから、早く帰ってきて」
それから毎日飽きもせず、僕は土に向かって愛をささやき続けた。
真っ直ぐに芽吹いたチューリップも、暖かくなるにつれ赤い蕾がほころんでいく。
ついに春だ。待ちに待った春だ。
早く、早く、花よ咲け。もう一人は耐えられない。
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