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6『邂逅』

「お待ちください」 黒の格子越しに、立ち去ろうとする背中を呼び止める。その声は情けなくも震えてはいたが、それでも男へ届いたようだった。 だが男が振り返ることはなく、その場に立ち止まりわずかに顔を傾けただけ。 それでも籠の鳥には充分だった。 「来年も——その次の春も、その次も……いつまでも、ここでお待ちします……」 次第に声は小さく小さくなり、それはまるで独白のような呟きとなる。 意図せず一筋の涙が頬を伝った。 それを拭いもせず、籠の中の鳥は、豪奢な着物から伸ばした手を、お互いを隔てる格子に添わせる。 すると男が、意を決したように囁くように口を開いた。 「もう一度……逢いにこよう。——生きて」 苦悶の声音が、男が今から向かう先が、決して容易な場所ではないことを知らしめる。 それでも男は、約束してくれた。籠の中に閉じ込められた鳥を憐れむように——。 そして意を決したように、とうとう振り返ることなく、その背中を小さくしていった。 残された籠の中の鳥は、ただひたすら、桜の花びらの舞う外の景色を、じっと、祈るように見つめていたのだった——。

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