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7『百花繚乱』

ココが寝部屋ならばどれほど良かっただろう、と思いながら真上にある月を見つめた。 ふかふかな布団とは違いどこまでも固い。 追われる身となり逃げる途中に草履をどこかに置いて来た。 爪先に目を落とすと、爪の内部まで土が入り、泥だらけの両足。伸ばし切った髪が無造作に荒れる。 誰かの屋敷に建てられた壁へと背中を預けた。 「はぁ、はぁ・・・・・・っ!」 ぽたぽたと紅色の水滴が流れ落ちる。 これ以上零れ落ちないよう胸元を手で強く押し込んだ。 「うわっ、お前さん。どうしたんだ!」 壁の向こうには角があり、そこから曲がってきた男が勝手に驚き出す。 その拍子に提灯を落としそうになったが体勢を持ち直した男。心配そうにこちらへと駆け寄ってくる。 *** 曲がり角で提灯の明かりが血の気のない若者を導いた。 その若者に小走りで近付いたら、夜桜など無い筈ないのに、花が咲いた。 しかも若者の顔を見た瞬間にーーー 何故か俺の目ん玉には桜が舞い散る中に座り込む若者が見えたのだ。中性的で幼い顔立ち。真ん丸な目元で、唇がぷっくりと張りがある。 怪我人なのに看取られしまい、ついなんて綺麗な男なのだろうと思ってしまった。

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