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10『春うらら』
春うらら。
カーテンの隙間から差し込んできた光が眩しすぎて頭をすっぽり布団で隠した所で、パタンと玄関のドアが閉まる音。
彼の出勤時間だ。
あーまた、行ってらっしゃいと頑張ってねと笑顔でお見送りができなかった。
仕方ないよね春だもの布団が恋しい。
もそもそと布団の中で寝返りを打ってから、枕元に置いてあった携帯を持ち、ラインを開く。
「文字だけでもいいよね」
勿論、誰かが答えるでもない問いかけに、一人頷き、彼のアイコンを押そうとしたタッチの差で彼からアルバムが送られ、その下には朝の挨拶と
「桜!満開ですよ!今度散歩に行きましょう」
その文章に笑みが溢れ、返事を打つ前に、また画像が送られてきたのを見て、声を出して笑ってしまった。
画像には桜をバックに自撮りをしている彼。
その頭には犬の耳と鼻は犬の鼻がついているのだから、本当にズルい!帰ってきたら思いっきり抱きしめてあげなきゃね。
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