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第一章・8

 駿は、千円札に夢中で手を伸ばした。  二日前から、水しか飲んでいない。  今日はこれで、何か食べることができる。  独り残された、暗い体育倉庫。  どうして。  どうして僕は、こんな目に遭わなきゃならないんだろ。 「仕方ないよね。僕は、Ωなんだもの」  涙が、零れた。  でも、僕はΩなんだから。  駿は、そう自分に言い聞かせて毎日を過ごしていた。  暗黒の、高校生活だった。

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