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第一章・16

 ふん、と伊織は鼻を鳴らした。 「篠崎がΩだからか? Ω同士で、つるみたいのか」  話しなら、私がしてやろう、と伊織は椅子にふんぞり返った。 「話題は? NYダウ? トーハクの国宝室? はやぶさ2?」  残念ながら、駿にはどれもちんぷんかんぷんだ。  仕方がないので、自分が知りうる一番新しい、素敵な話題を伊織に提供した。 「花壇の菊の花が咲いてて、とってもきれいです」  ほう、と伊織は少し感心したようだった。 「朝食のメニューでも言い出すかと思ったら。意外に雅だな」  そしてすぐさま、立ち上がった。 「よし、観に行こう」 「ええっ!?」  案内しろ、と伊織はすでに歩き始めている。  話しだけで済むと思ったのに!  仕方なく、駿はのろのろと椅子から立ち上がった。

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