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第一章・17
「これが菊だと!? 何て貧相なんだ!」
伊織は花壇の小菊を見た途端、そう言い捨てた。
「私は、大菊の厚物や管物を想像していたのに」
がっかりしたような伊織に、駿は思わず声をかけていた。
「でも、小菊も可愛いと僕は思います。一生懸命咲いているんだ、って思うんです」
なるほど、と伊織は駿を見た。
「面白い」
「え?」
「こうも堂々と私に意見する、しかもΩとは、面白い」
篠崎に、すぐにくれてやるのは、少々惜しくなった。
伊織は、そう感じていた。
しばらく飼って、玩具にしてみるか。
そんな風に、考えた。
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