17 / 223

第一章・17

「これが菊だと!? 何て貧相なんだ!」  伊織は花壇の小菊を見た途端、そう言い捨てた。 「私は、大菊の厚物や管物を想像していたのに」  がっかりしたような伊織に、駿は思わず声をかけていた。 「でも、小菊も可愛いと僕は思います。一生懸命咲いているんだ、って思うんです」  なるほど、と伊織は駿を見た。 「面白い」 「え?」 「こうも堂々と私に意見する、しかもΩとは、面白い」  篠崎に、すぐにくれてやるのは、少々惜しくなった。  伊織は、そう感じていた。  しばらく飼って、玩具にしてみるか。  そんな風に、考えた。

ともだちにシェアしよう!