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第二章・6

 ご機嫌を直してください、と、駿は箸で取った伊達巻を伊織に差し出した。 「はい、伊織さま。あ~ん」 「そこまでやらなくて、いい!」  それより、と伊織は駿に手を差し出した。 「朝の手紙。差出人リストはできたか?」 「あ、はい。これです」  駿は、リストと手紙をデスクの上に出した。  リストを眺め、手紙の山に目を落とし、伊織はそれを片っ端から読み始めた。 「伊織さま、御飯」 「口を開けるから、その時に何か放り込め」  手紙を読む伊織が口を開ける隙を狙って、駿はエビやらカニやら鰻の蒸し焼きやらを運んだ。 (何だか、ひなに餌を運ぶ親鳥になったみたい)  ふと伊織が駿を見ると、実にいい笑顔をしている。 (ようやく、私に仕える喜びが解ったか)  思惑は違ったが、ようやく接することができた二人だった。

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