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第二章・7
さて、ラブレターの返事だが。
「この原稿を68部コピーしてくれ。そして、こっちを46部」
「はい」
盗み見た伊織の返事は、2種類あった。
『お手紙ありがとう。これからも、その調子で私を慕ってくれたまえ』
『お手紙ありがとう。残念ながら、君の期待には応えられない。諦めてくれたまえ』
思うに、最初の返事は当たり障りのないファンレターへのものだ。
そして2番目の返事は、おそらく交際を願ってきた人間へ宛てたものだろう。
(たった一行なんて、そっけないなぁ)
それでも、コピーされた100枚以上の手紙に、直筆のサインをせっせと入れている伊織には、好感が持てた。
「伊織さま、大丈夫ですか?」
「これくらい、日常茶飯事だ」
これを毎日やっているのか。
人気者も大変なんだな、と駿はペンを走らせる伊織の肩を、せっせと揉んだ。
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