38 / 223

第二章・19

 手足までばたつかせ、必死に拒む駿。  それでも伊織は容赦なかった。  力に任せて駿を抑え込み、その肌に口づけを落として舌を這わせた。 「イヤぁ。ヤだぁあ……」  やがて力尽きたのか、諦めたのか、駿は大人しくなった。  だが、泣いている。  嗚咽を漏らし、涙を零し、鼻をすすっている。  ご機嫌なベッドタイムを味わおうと思っていた伊織だったが、駿の泣き声に動揺した。  どんなに愛撫を凝らしても、しんとして熱くならない駿の身体を異様に感じた。 「どうした。気持ち悦くないのか」 「ない、です」 「君はΩだろ。発情しないのか?」 「まだ、したことありません……」

ともだちにシェアしよう!