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第二章・21
「多分、伊織さまのことが好きだから、です」
「何? 君は篠崎が好きなんじゃなかったのか?」
「篠崎先輩も好きですけど、伊織さまも好きです。今日一日で、好きになりました」
訳が分からない。
他の従者はみな、自分から気に入られようと必死で私を求めて来るのに!
「好きならば、臥所を共にするだろう。違うか」
「好きだから、伊織さまを利用して楽な人生を送りたいとは思わないんです。好きだから、無理強いされたくないんです」
僕にもよくわからないけど、多分そういうことです。
声は小さいが、はっきりと駿はそう言った。
「駿」
解った、と伊織は頷いた。
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