50 / 223

第三章・4

 屋敷へ到着し、駿は家庭教師に思い切って話してみた。 「先生、今日の学習を少し早く終わらせることはできませんか?」 「なぜかな?」  それはその、と駿は口ごもった。  伊織さまに会いたいから、とはとても言えない。  下を向いて赤くなってしまった駿に、教師はからかうような口調だ。 「誰かと、デートとか?」 「え! あ、そう。そうです。会いたい人が、いるんです」  若いっていいねぇ、と教師は微笑むと、うなずいた。 「今度の模試、ずいぶん成績が伸びたからね。ご褒美をあげよう」 「ありがとうございます!」

ともだちにシェアしよう!