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第三章・5

 お屋敷に出入りするようになってから、一か月近くが経っていた。  伊織が居そうな部屋は、目星がついている。 「今の時刻なら、お茶の時間だ」  ティールームか、茶室。  でなければ、庭園で野点だろう。  今日は寒いので、庭園はなかろうと駿はティールームへ向かった。 「ここだ」  どうしよう。  どきどきしてきた。 「何か?」  護衛の男が、ドアの前に立っている。  知らない顔ではないので、駿は素直に話した。 「伊織さまに、会いたいんですけど」

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