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第三章・6
しかし、男の返事は色よいものではなかった。
「それは無理だ」
「なぜですか!?」
「今日は木曜日だからだよ、金曜日の少年」
「あ……」
重い現実が降りかかって来た。
今まさに、僕じゃない子が伊織さまと一緒にいるんだ。
笑い合い、お喋りをし、甘いお茶を飲んでいるんだ。
「伊織さまは公正な御方だ。木曜日に、君と会うことはなさらない」
「はい……」
どんな子だろう。
きっと僕よりカッコよくて、頭が良くて。
会話も知的で、作法もできてて。
なぜだか、涙がにじんできた。
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