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第三章・11
「また、こんなに……」
たちまち、心に影が差す。
伊織さまは、僕だけの伊織さまなんかじゃないんだ。
同じように彼を慕う人間は、いくらでもいる。
のろのろと、手紙をかき集めた。
用意していた紙袋に、それらを詰める。
「ま、人気のバロメーターだからな」
伊織は涼しい顔で、そんなことを言っている。
「いつものようにリストを作っておいてくれ」
「はい」
3年生の教室まで伊織を送った後、駿は自分の教室へ戻った。
どさり、と机に手紙の入った紙袋を置いた。
はぁ、と溜息をひとつ。
しかし、手紙を眺めているうちに、いいことに気が付いた。
駿は急いでペンを出すと、ノートに文字をしたためた。
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