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第三章・15
「い、伊織さま。食べるものが違います!」
慌てて重箱をほどき、箸を取り出す駿の姿を、伊織は微笑ましく見ていた。
「その、テリーヌが欲しいな。駿、食べさせてくれないか」
そう言いながらも、伊織はテリーヌを手でつまんでいる。
「伊織さま?」
そして、駿の唇に、それを咥えさせた。
「……!」
伊織の意図が解った駿は耳まで真っ赤になったが、イヤとは言えない自分がここにいる。
駿は、そっと伊織に顔を近づけた。
そして、口移しで食事を与えた。
「ん……」
「ぅん。美味しいよ、駿」
次は、そこのローストビーフを。
伊織は駿からの口移しで、昼食を摂った。
甘い甘い、昼食だった。
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