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第四章・3
ファン。
確かに、伊織のことは大好きな駿だ。
だが……。
「ファン、というのは少し違うような気がします」
「ふぅん?」
「ファンなら、ワクワクするだけなんですけど、伊織さまのことを考えると、胸が痛くなることがあるんです」
「ほぅ」
例えば、と駿は誰にも言えない秘密を、小声で篠崎に打ち明けた。
まだ、発情期がこないこと。
だから、伊織さまを満足させてあげられないこと。
それでも伊織さまは、我慢して待ってくれていること。
Ω同士だからこそ言える、赤裸々な悩みだった。
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