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第四章・4
「そうか、御影くんは天宮司にすっかり参っちゃったんだ」
「?」
「もう、どうしようもなく愛してる、ってことだよ」
「そ、そんな!」
愛、だなんて。
僕は、伊織さまの従者で!
確かに伊織さまのことは大好きだけど、あああ愛だなんてそんな大げさな!
「愛してなきゃ、そこまで深く想ったり悩んだりしないよ」
「そう、ですか」
誰かを愛するなんて、当たり前のことだよ、と篠崎は微笑んだ。
「発情期は、いずれ必ず来るから。だからあまり気にしないでいい」
「はい」
むしろ、と篠崎は眉をひそめた。
その時がいつ来るか、備えがあるか、が問題だ、と。
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