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第四章・5
「発情期のΩは、性欲を抑えられなくなったり、また他のαやβを誘淫するフェロモンを発したりするんだ」
「じゃ、じゃあ」
「天宮司以外の人間に、発情したくはないだろう?」
せわしく首を縦に振る駿に、篠崎は諭した。
「今のうちに、医者に相談した方がいい。そして備えるんだ」
「どうやって、ですか」
僕の場合は、毎日これを飲んでる、と篠崎はポケットからカプセルを取り出して見せた。
「発情抑制剤だ。字面の通り、Ωの発情を抑える効果がある」
初めて見た、と駿は眼を円くした。
Ωの発情期について、ここまで詳しく聞いたこともない。
「あの、発情したらどうなるんですか?」
「いや~、それはもう大変だよ」
苦笑いするところを見ると、篠崎は何か失態をやらかしたことがあるのだろうか。
(篠崎先輩ほどの人が、言葉を濁すなんて)
発情期、おそるべし!
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