83 / 223

第四章・11

 そういえば、と駿は思い出した。 「伊織さまは、意外に寒がりだ」  学校にも、ひざ掛けを持参しているくらいだ。 「ひざ掛け! ひざ掛けにしよう!」  マフラーとは違い、ひざ掛けなら目立つこともない。  そして、もうこうなったら、手編み!  クラスの女子が、最近せっせと編み物をしている姿を目にしている。  ネットで検索し、初心者でも簡単にできる、というかぎ針を使った編み方を練習してみた。  これなら、クリスマスまでに間に合いそうだ。 「えっと、12月24日は……」  火曜日だった。 「金曜日じゃないのか……」  いつ、渡せばいいだろう。  火曜日の少年の前で手渡すなんて、できない。  いいさ。  お屋敷の人に、ことづけておけばいい話。  天井を向いて、思わずにじんだ涙を目の奥に収めた。

ともだちにシェアしよう!