84 / 223

第四章・12

 毎日せっせと、駿は編み物を続けた。  寝食を忘れるほど、と行きたいが、寝食を忘れると伊織からお叱りを受けるので、そこは我慢した。 「もっと大きい方がいいかな」  せめて毛糸はいいものを、と通販でシルクウールを購入。  柔らかくすべすべの手触りに、これなら伊織さまも喜んでくださる、と自信を深めた。  ただ……。 「クリスマス、伊織さまと一緒に過ごしたかったな」  はぁ、と溜息を吐く。  涙やら溜息やら、恋慕やら。  さまざまな駿の心が、毛糸と一緒に編み込まれてゆく。 「何だか、念を込めてるみたい」  手作りの品は、プレゼントには重い。  そんな記事を目にしたのは、ひざ掛けを編み始めた後だった。 「でも、マフラーやセーターじゃないんだし」  気に入らなかったら、捨ててもいいんだし。

ともだちにシェアしよう!