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第四章・13
それでも、伊織がひざ掛けをゴミ箱に捨てている姿を想像すると、泣けてくる。
やめてください、伊織さま。
僕、一生懸命編んだんです。
そんな夢を見ては、目が覚める。
「愛って、こんなに苦しいものなんだ」
優しい伊織さまがそんなことをするはずはない、と思っても、泣けてくる。
「どうしよう。やっぱりやめて、今からでも既製品を買おうかな」
そう思いながら、夜中にパソコンを開く。
そして、やっぱり思い直して、編み物を始める。
「ああ、もう。僕、どうしたらいいのさ!」
体が、かっかと火照ってくる。
熱い息を、吐く。
そんな夜を、駿は送るようになっていた。
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