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第四章・15

   そこで、駿の笑顔が脳裏に浮かぶのはなぜだろう。  恋人がいると解っている火曜日の少年を、0時まで拘束するのは可哀想だと言うだろうか。  それとも、恋人がいながら私に仕える火曜日の少年を、不純だと言うだろうか。 「多分、両方だな」 「何かおっしゃいましたか?」 「いや、何でもない」  伊織は、素直になれなかった。  自分の本心に。  本当に、クリスマスを共に過ごしたいのは、誰なのか。  気づいていながら、気づかぬふりを。 「伊織さま、今日は何だか物憂げな御顔ですね」 「そうか?」  でも、と火曜日の少年は艶然と微笑む。 「そんな伊織さまも、素敵です」  少年は、素肌を摺り寄せてきた。

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