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第四章・24
僕は伊織さまのおかげで、苛められなくなった。
じゃあ、この学校には、クラスには、苛めは無くなったのかな?
(答えは、ノーだ)
駿の次に弱いものが、その標的になろうとしているのだ。
それが、小松なのだ。
「小松くん、困ってることとか、ない?」
駿は、身を乗り出した。
「僕は、大丈夫だから」
薄く微笑む小松が、痛々しい。
きっと、じわじわと苛めが悪質になってきているのだろう。
それでも、助けて、と言わない、いや、言えない気持ちは痛いほどよく解る。
(時間のある時は、なるべく小松くんの近くに居よう)
虎の威を借る狐、ならぬ、伊織さまの威を借る僕、ではあるが。
今度の金曜日に、伊織さまに相談してみよう。
今は病床の伊織を想い、駿はひざ掛けを編み続けた。
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