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第五章・2

 不審そうな駿の視線を感じたのか、男は姿勢を少し崩して続けた。 「伊織さまのご命令なのだ。今日だけ、だからな」 「伊織さまの?」  伊織はインフルエンザで臥せっているはずだが?  訳の分からぬまま、ただ伊織へのプレゼントだけはしっかりと胸に抱えて駿は自動車に乗り込んだ。  外はすっかり暮れており、街の明かりが灯っている。  そこから、やや郊外へ車は滑った。  やがて天宮司邸の外塀に到着し、駿は警備員に会釈をしようと窓際に寄った。 「え!?」  にこやかに手を振るのは、確かに警備員。  だが、赤い服のサンタクロースの扮装をしているのだ! 「メリークリスマス、駿さま!」 「め、メリークリスマスです!」

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