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第五章・4
「ディナーの準備ができているよ。さぁ、中へ入ろう」
「いえ、その! 伊織さま、もう大丈夫なんですか!?」
「ん?」
「インフルエンザ!」
ああ、と伊織は、やたら爽やかに笑った。
「仮病だよ。心配かけてすまない」
「仮病!?」
あの伊織さまが、品行方正な生徒会長の伊織さまが、仮病!
呆然としながらも、駿は伊織にいざなわれダイニングルームへ入った。
「うわあぁあ!」
大きな大きなクリスマスツリーが、まるで雷門の風神雷神像のように二本立っている。
テーブルには、とっておきのカトラリーが銀に輝き、純白のクロスやナプキンに光を落とす。
「さあ、掛けて」
「はい……」
巧くできたことに、クリスマスツリーは伊織と駿の背後に来るよう配置されている。
二人とも、素敵なツリーを眺めながら食事が楽しめる、というわけだ。
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