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第五章・5

「まずは、シャンパンで乾杯といこうか」 「伊織さま、僕たちはまだ未成年ですよ」 「一口だけ」  本当に、一口だけのシャンパンだったが、それはもう未体験の味わいだった。 「美味しい……」 「ふふ、駿は味が解るのか。成人してからが楽しみだな」  そんな風にお喋りをしながら、駿は楽しく伊織とディナーをいただいた。  あまりに美味しく、あまりに楽しく、あまりに嬉しかったから、つい大切な事を忘れるところだった。 「伊織さま、どうして仮病なんか使って学校を休んだんですか?」  篠崎先輩も、心配してました、と言うと、伊織はそれには答えず、ただ立ち上がった。  立ち上がり、歩き、大きなツリーに掛けてあったプレゼントの一つを取り上げて戻って来た。 「駿への、プレゼントだ」 「え!? あ! ありがとうございます!」 「早く開けて」 「はい!」

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