104 / 223

第五章・6

 リボンをほどき、包みを開き、駿は息を呑んでいた。 「これは……」  20号の、ささやかなカンバスだったが、そこには美しい風景が描かれていた。  いや、ただの風景画ではない。  駿の心象をも表した、特別な絵だった。  鮮やかな緑の山から見下ろす、市街地。  そのさら先には、海が輝いている。  そして、そこを飛ぶ一羽の白い鳥。  小学生の頃、一度だけ遠足へ行ったことがある。  標高600m程度の低い山だったが、そこから見下ろす緑は、街は、海は輝いていた。  ここを、鳥になって飛んでみたいな。  そんな風に、考えたものだ。    翼があれば、山も、街も、海さえも越えて行ける。  でも、それは無理な話。  子ども心に、自分をがんじがらめに捕えて離さない茨の存在に、気づいていた。

ともだちにシェアしよう!