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第五章・7

「それを、伊織さまが解いてくれたんです。僕、鳥になれたんです」  涙を流しながら、そう訴える駿に、伊織は優しく語りかけた。 「まさか、そこまでシンクロするとは思っていなかったけれど、喜んでくれて嬉しい」  確かに、この鳥は駿の象徴だ、と笑った。 「君はこの鳥のように自由だ。私さえ呪縛から解き放つ、白い鳥だ」  実はね、と伊織は囁いた。 「この絵を描くために、嘘をついて学校を休んだんだ。乾かす時間も欲しかったしね」  伊織さまが、僕のために!? 「昔描いた絵をプレゼントしようと思っていたんだ、当初は」  だが、それでは私の気が済まなくなった。  新しい何かをも、この絵に塗り込め、駿に渡したくなった。 「新しい何か」  それは、何でしょう。  問いかける駿に、伊織は逆に問うた。 「それは私が訊きたいよ。駿、君はどんな魔法を私にかけたんだい?」  魔法をかけられたのは、僕の方なのに。  ツリーとキャンドルの光に滲む伊織の姿を、駿はただうっとりを見つめていた。

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