107 / 223

第五章・9

 ディナーの後はオーディオルームで、クリスマスソングを聴いた。 「第九にでも出かけようかと思ったけど、やめておいたよ」  今夜は、駿と二人きりで過ごしたかったからね、との伊織の言葉が嬉しい。  ソファに体を預け、手を取り合って安らかな聖歌に浸った。  でも、とも思う。 「今日は、火曜日です。本当なら、『火曜日の少年』と過ごす日だったんじゃないですか?」  それには、シニカルに笑う伊織だ。 「彼には他に男がいる。これ幸いに、そいつとよろしくやっているさ」  そして、駿の肩を寄せた。 「インフルエンザだと嘘をついたのは、他の誰でもない駿とイヴを過ごしたかったからでもあるんだ」  他の、どの曜日の少年でもない、駿と。 「伊織さま」

ともだちにシェアしよう!