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第五章・9
ディナーの後はオーディオルームで、クリスマスソングを聴いた。
「第九にでも出かけようかと思ったけど、やめておいたよ」
今夜は、駿と二人きりで過ごしたかったからね、との伊織の言葉が嬉しい。
ソファに体を預け、手を取り合って安らかな聖歌に浸った。
でも、とも思う。
「今日は、火曜日です。本当なら、『火曜日の少年』と過ごす日だったんじゃないですか?」
それには、シニカルに笑う伊織だ。
「彼には他に男がいる。これ幸いに、そいつとよろしくやっているさ」
そして、駿の肩を寄せた。
「インフルエンザだと嘘をついたのは、他の誰でもない駿とイヴを過ごしたかったからでもあるんだ」
他の、どの曜日の少年でもない、駿と。
「伊織さま」
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