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第五章・18

「駿、天井を見るがいい」 「……わぁ!」  高い天井には、一面に星々が瞬いていた。  すごい、すごいと駿は喜んだ。 「今の夜空を、忠実に再現してある」 「伊織さまは、何でもできるんですね!」  あれはオリオン座、と無邪気に指さす駿が、伊織にはたまらなく愛おしかった。  できれば、今夜こそ結ばれたかったが。  そう、思った。  だが、彼の身体がまだその時を迎えていないのであれば、我慢しよう。  自分が、こんなに我慢強いとは思わなかった。  元より、飽きっぽい気質のはずだ。  日替わりで従者を換える、などということまでやっている。  それが、駿に限っては鳴りを潜めている。  大切な、ただ一人の存在だった。

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