133 / 223

第六章・2

「駿はどうなんだ。父親とは、まだ連絡がとれないのか? 母はどうしている?」  駿もまた、首を横に振った。 「父さんは、もう帰ってこないと思います。母さんは、たぶん男の人と一緒です」  そうか、と伊織は歩みを止めた。 「駿が望むなら、父親の行方を捜索してもいいんだが。母親と男を別れさせることも、可能だ」  いいえ、と駿は慌てた。 「両親には、それぞれの人生があると思うんです。僕も、もう子供じゃないし、大丈夫です」 「駿がそう言うなら、放置しておくよりないが。困ったことがあれば、必ず言うように」 「はい」  伊織さまは、いつでもこんなに僕のことを心配してくれる。  その事実が、無性に嬉しい駿だった。  

ともだちにシェアしよう!