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第六章・6

 その途端、伊織がふわりと駿を抱きしめた。 「伊織さま、人が見てます……」 「見たい奴には、見させておくがいい」  本当に。  本当に君は、あの絵に描いた白い鳥のように羽ばたいているのだな。 「伊織さま……」  駿の腕も、おずおずと伊織の体に回された。  雑踏の中にいる二人だが、彼らの周りだけ静寂に包まれていた。  何も言わずに、護衛の人間が壁を作る。  伊織は、駿に口づけた。 「好きだよ、駿。そんな君が、大好きだ」 「……」  真っ赤になって、言葉を失った駿に、伊織は再び長い長いキスをした。

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