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第六章・9

「伊織さま、そんな……ッ!」 「いいから駿は、大人しくしていたまえ」  伊織は駿のペニスを掴むと、優しく摺り始めた。  摺りながら、ぽつりぽつりと、その内心を伝え始めた。 「実は今、散々迷っていることがある」 「え?」  息を弾ませながら、駿は耳を傾けた。 「進路のことだ」  伊織は、幼稚園から大学まで一貫教育の学校に通っていた。  中等科までは。 「私が中等科にいたころ、父が倒れてね」  過労、ということで、退院後は天宮司邸で療養をしていた父。  大丈夫だ、と父は言った。 「しかし私は、父が心配だったんだ。だから高等科には進まずに、この屋敷から通える学校を受験した」 「そうだったんですか」

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