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第六章・16

「駿」 「はい」 「私が卒業しても、こんな風に会ってくれるかい?」  そんな。  伊織さま、そんなお話、まだ早くありませんか? 「もちろんです」  思わず流れた涙を、伊織は唇で吸ってくれた。 「今日は何だか、泣き虫だな」 「ごめんなさい……」  泣かせたのは、私だ。  すまない、駿。  泣きじゃくる駿を、伊織は背中を撫でてあやした。  随分長いこと二人でそうして、見えない未来をかき混ぜていた。

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