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第七章・5

 篠崎は、今度は伊織の両肩に手を置き、軽く揉んだ。 「いつも自信にあふれた天宮司らしくないぞ」 「うん、そうだな。そうだった」  ただ、この恋があまりにも突然すぎて。  白い翼を持った少年が、あまりに素早く心の中に飛び込んできてしまって。 「私は少々、混乱していたようだ」 「それでこそ、君だ」  行こう、と生徒会室を出た。  ドアの傍らには、水曜日の少年が控えている。 「すまない。寒かっただろう?」 「いいえ、伊織さまを想う心が、温めてくれましたから」  はぁ、と心の中でため息をつく。 (駿は、こんなあからさまな媚を売ることはないのだが)  胸に伊織の鞄を抱きしめ、科を作る姿も滑稽だ。  駿なら、ぶらんと片手に下げているところだ。 (私はどうして、曜日ごとに従者をおく、などと面倒なことを始めてしまったのか)  いまさらながら、過去の自分の傲慢さを恥じる伊織だった。

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