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第七章・6
進路を決めたよ、という伊織の報告に、駿は素直に喜んだ。
「おめでとうございます、伊織さま」
「どうして『おめでとう』なのかな?」
だって、と駿は眼を輝かせた。
「伊織さまが、本当に進みたい将来を決められたんでしょう?」
だから、おめでとう、なんです。
「ああ。どうして君は、そんなに無垢なのかな」
ベッドの上の駿を、伊織は優しく抱きしめた。
そして、耳元で囁いた。
「ケンブリッジ大学へ進むことにしたよ」
海外。
覚悟はしていた駿だった。
だが、その言葉は一瞬、心臓の鼓動を止めた。
温かく通う血を、凍り付かせた。
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