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第七章・7
視界が、どんどんぼやけてゆく。
「行っちゃうんですね、外国へ」
無理に、明るい声を出そうと頑張った。
それでも、喉が震えてしまう。
あふれる涙を、こらえきれなくなる。
「駿」
「伊織さま……ッ」
ぎゅう、と力を込めて駿は伊織の身体を抱きしめた。
「……嘘だ」
「!?」
「私が駿を置いて、国外へ行くはずがないじゃないか」
「伊織さま!」
ひどいひどい、と駿は伊織をがくがく揺さぶった。
泣きながら、笑顔になる。
「泣き笑いという顔を、初めて見たよ」
「伊織さまは、意地悪です!」
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