156 / 223

第七章・9

「そう。私の通う大学でもあり、駿が通うことになる大学でもある」 「それって……」  伊織は駿の鼻をつまんだ。 「駿の成績は著しく伸びている。君はまだ、1年生だ。今からしっかり頑張れば、私の後を追って入学することなど容易いものだ」 「い、伊織さま!」  駿は、出会った頃の伊織を思い出していた。  わがままで、強引で!  でも、それでいて、眩しい光で行き先を照らしてくれる。  伊織の表情は、明るかった。  迷いを捨て去り、晴れ渡った眼をしていた。 「伊織さまぁ!」  今度は、嬉し涙だ。  忙しいことだ。 「進路は選べるが、駿は選べないからね。この世でたった一人の、大切なパートナーだ」  これ以上ない、伊織の素敵な言葉だった。

ともだちにシェアしよう!