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第七章・11
「それに、ほら。こうして駿が傍にいるだけで、私は満足なんだから」
「ありがとうございます、伊織さま」
もう、泣かないで。
温かなベッドで、抱き合った。
時々互いの肌に鼻を擦り付け、甘えた声を漏らした。
「伊織さま、いい匂いがします」
「ソープの香りだよ」
「それとは、ちょっと違うんです」
「不思議なことを言うね、駿は」
だが、時間は過ぎる。
無常に、金曜日は終わる。
「おやすみなさい、伊織さま」
駿は、そっとベッドを抜け出した。
伊織は、安らかな寝息を立てていた。
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