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第八章・5

 下足棟に着いたら、伊織の靴棚を開けてシューズを出すのが駿の役目だ。  だが、今日はそこに大勢の生徒たちが陣取っていた。 「はい! ちゃんと並んで!」 「食べ物は、こちらの箱に! それ以外のプレゼントは、こっち!」 「手紙のみの場合は、ここに入れて!」  あの人たちには、見覚えがある。 「伊織さまの、親衛隊の人たちだ」  伊織の靴棚に贈物を届けようと殺到した生徒たちを、実に手際よくさばいている。 「やあ、君たち。おはよう」 「おはようございます、天宮司さま!」  大きな箱いっぱいのチョコやらプレゼントやら手紙やらを前に、彼らは額に汗している。 「今年のバレンタインデーも、君たちのおかげで問題なく過ごせそうだよ」 「お褒めのお言葉、ありがとうございます!」

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