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第八章・6

「伊織さま、シューズです……」  親衛隊の迫力にすっかり委縮し、小さくなってしまった駿は、ようやっとの思いで伊織にシューズを差し出した。 「うん」  一斉に、視線が駿に注がれる。  痛い。  視線の圧が、痛い。  親衛隊の誰もが、駿に嫉妬していた。 「君たちには、本当に感謝している」  さりげなく、親衛隊と駿の間に伊織が割って入った。 「私は間もなく卒業する。そう、お別れなんだ。だから、今年のバレンタインデーには、私から君たちへ手ずから贈物を渡したい。受け取ってくれるだろうか」  天宮司さま! との声が、そこここから上がった。

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